飲食店を開業して末永く経営したい!経営に失敗しないためにすべきこと

コラム

飲食店を開業して「自分の店を持つ」という夢を叶えたいのに、赤字を出さずに経営できるかどうかが不安で躊躇しているという人はいませんか。不安でも、最初の一歩を踏み出さなければ何事も始まりません。きちんと準備して、一歩目を踏み出せるようにしましょう。この記事では、飲食店の開業やその後の経営に必要なポイントと、失敗しないためにすべきことについて解説します。

開業時にやるべきこと・それぞれのポイント

開業までにやっておかなければならないことがいくつかあります。それらは開業後の経営にも大きく影響することです。ポイントを押さえて確実に行うようにしましょう。ここでは開業時にする必要があることと、そのポイントについて説明します。

コンセプト決め

最初に「どのような店にするか」というコンセプトを決めてしまいましょう。コンセプトは店の屋台骨となる大事な部分です。物件を探す際にもメニューを決める際にも基準となる部分なので、しっかり考えて決めましょう。コンセプトを決める際のコツは、「最初にターゲットを決めてしまうこと」です。「どのような人に来てほしいか」を先に決めてしまえば、自ずと「誰にどのような価値を提供したいか」という点も明確になります。これこそがコンセプトのヒントとなる重要なポイントです。

できるだけ多くの人に来店してもらいたいからといって、ターゲットを曖昧にしてしまうのはよくありません。相手が定まっていない状態では、何をすれば喜ばれるかがはっきりしないため、モノやサービスの的確な提供が難しくなります。相手を定めることによって、店の売りとなる部分も明確に示せるのです。

物件探し

物件を探す際には、ターゲットが多くいる地域を選びましょう。ターゲットがほとんどいない地域に出店したのでは、しっかりコンセプトに沿った店づくりをしても、来客は見込めません。ターゲットが多い地域に出店することは、繁盛店を作るうえで最低限必要なことです。とはいえ、いくらターゲットが多いところでも、1か所見ただけで決めてしまうのはおすすめできません。来客数を稼げても、家賃が高すぎると赤字になりかねないからです。家賃は毎月かかり続ける負担の重い固定費なので、費用対効果をよく考える必要があります。できるだけ多くの物件を実際に見に行って、比較検討することが大切です。

物件がある程度絞れてきたら、1日中その物件の近くにいて、時間帯ごとの通行人数や属性などを確認しましょう。時間帯や天候などによって、人通りが大きく変わることもあり得ます。近くにはどのような店舗があるのかをチェックすることも大事です。近くに競合店がないかも確認しておきましょう。

事業計画書の作成・資金調達

事業計画書が必要なのは、金融機関から資金調達をするときだけだと思われがちです。しかし、お金を借りる予定がない場合でも、事業計画書を作成して損することはありません。むしろおすすめします。なぜなら、「いつまでに、どれくらい利益を出すか」を最初に決めておけば、計画的に経営できるからです。事業計画書を作成することによって、店をどのように成長させていくべきかという道筋がはっきりします。ターゲット層のニーズを分析し、対応策を考えることは、他店との差別化を図るうえでも役に立つでしょう。なお、事業計画書を書くうえでわからないことは、専門家に相談することも必要です。何をどのように書けばよいか、詳しく教えてもらえます。

手続き関係

飲食店を開業する際には、保健所や消防署など各機関への届け出が必要です。飲食店で必要な資格というと、調理師免許を思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、実際には調理師免許の有無は問われません。必須なのは食品衛生責任者の資格です。店舗の収容人数が30人以上の場合は、併せて「防火管理者」の資格も必要になります。食品衛生責任者は都道府県、防火管理者は出店地域を管轄する消防署が主催する講習を受講することで取得可能です。新規に事業を起こした場合は、個人事業の開業届出書も提出しなければなりません。個人事業の開業届出書は、青色申告をするために必要な届け出なので、提出先は管轄の税務署です。

集客

飲食店を開業するうえで最大の悩みともいえるのが集客です。ただ店舗を作ってオープンさせれば自然と人が集まってくるというものではありません。集客のための施策を行う必要があります。飲食店の集客手段としては、看板設置やチラシ配りなどが定番です。SNSの普及により、集客手段にSNSを取り入れる店舗も増えています。集客のための施策という面では、他店と差別化を図ることも重要です。イベントを行う、サブスクサービスを用意する、変わったメニューを提供するなど、独自性をアピールすることが差別化につながります。

飲食店経営が難しい理由

飲食店経営はとても厳しく、2年で50%が廃業するといわれています。なぜここまで多くの飲食店が短期間で廃業に追い込まれてしまうのでしょうか。ここからは、店舗経営を難しくしている、飲食業界特有の構造的な理由について説明します。

競合店が多すぎる

飲食店は開業資金さえあれば比較的簡単に始められるため、高開業・高廃業の部類に入ります。しかも、同じ商品を扱う店舗だけが競合店となるのではありません。例えば、ラーメン店と牛丼店とパン屋を見て、すぐに競合店と思う人は少ないでしょう。扱う商品が異なるからです。しかし、ランチタイムには客を奪い合う関係なので、近くにあれば競合店となり得ます。飲食店の場合、競合相手は、ほかの個人店だけではありません。コンビニや大手チェーン店も競合店に含まれます。生き残るためには、これらの店舗よりも客から選ばれるようにしなければなりません。飲食店は競合が多すぎるため、自店が選ばれる確率が低く、集客が難しいというわけです。

売上・利益が安定しない

売上や利益が安定しにくい点も、飲食店の経営が難しい理由の1つです。扱っている商品によっては、シーズンや天候によって客入りが大きく左右されかねません。シーズンどころか、日によって客入りが大きく変動することもあるでしょう。飲食にも流行の波があるため、コンスタントに人が集まっていたのに、ある日急に人が来なくなってしまうこともあります。今日は多くの人に来てもらえたからといって、明日も同じように人が来るとは限らないのです。

客入りを期待して余分に仕入れたら、それが全部残ってしまうということもあり得ます。仕入れが上手くいかず食品ロスを出すことになると、通常通りの客入りがあったとしても、利益が下がってしまうでしょう。何年も安定して利益を上げ続けるのは簡単なことではありません。

「体が資本」のため体力依存

飲食店の経営は、典型的な労働集約型ビジネスです。少ない元手で始められる代わりに、事業活動の多くを人間の労働力に頼っているという特徴があります。開店日・開店時間は、常に誰かが働き続けなければなりません。店主がひとりで切り盛りしている店の場合は、店主が病気で店に立てなくなってしまったときには、売り上げがゼロになってしまいます。

売上はなくても、店舗を維持するためには家賃などの固定費が発生するのですから、ゼロではなくマイナスかもしれません。周りに競合店があれば、店を閉めている間に客離れが起こってしまうこともあるでしょう。病気が回復して再度店を開けても、以前と同じような集客が見込めるわけではありません。飲食店経営は、病気や体力面が原因で挫折してしまうこともあるのです。

常に人手不足

業態は競合していなくても、労働力を奪い合う競合店はいくらでもあります。しかも、ライバルとなるのは近隣の店だけではありません。資金力のある大手が高い給与で労働力を確保し始めると、個人経営の店ではアルバイトの確保が難しくなり、人手不足が深刻になります。しかし、アルバイトを雇いたくても、そう簡単に高い時給を示すわけにはいきません。人件費は、店舗経営上とても重みのある固定費だからです。アルバイトの確保がままならないことが、オーナーの体力的な負担がなかなか減らない原因の1つにもなっています。

飲食店経営に失敗してしまう人の特徴

飲食店経営の廃業率が高い裏には、飲食業界の特性があるというのは確かです。しかし、原因はほかにもあります。飲食店経営は比較的簡単に始められる分、オーナー側に原因があって廃業に至っているケースも少なくないのです。とくに、職人気質の人は気を付ける必要があります。料理にばかりこだわって経営には無頓着というのが、飲食店経営で失敗しやすい人の典型だからです。経営に関する数字を理解できず、現状の分析や今後の計画も立てることができないというのでは、飲食店経営は厳しいといえます。また、すべて気合や根性で解決しようとする人も、店を続けるのは難しいでしょう。無理して体を壊してしまうようでは元も子もありません。

生き残るお店にするために必要なこと

ここまでに説明した通り、飲食店経営が難しいのは確かです。しかし、長続きしている個人店はたくさんあります。では、長続きする店と続かない店の違いはどこにあるのでしょうか。ここからは、厳しい飲食業界で生き残るために何が必要なのかを解説します。

「プロダクトアウト」の考えを捨て「マーケットイン」に

飲食店経営において、コンセプトを明確にすることはとても重要なことです。コンセプトに基づいて店づくりをし、メニューを考えるからです。飲食店経営を長続きさせるためには、経営の軸となるコンセプトを考える時点から心がけたいことがあります。それは「プロダクトアウト」ではなく「マーケットイン」の考え方を持つことです。サービス提供側の都合でサービスを考えることを「プロダクトアウト」、消費者のニーズからサービスを考えることを「マーケットイン」といいます。店を利用するのはお客様です。「自分がやりたいこと」を押し付けてしまうようでは、長く支持される店にはなりません。ターゲットが求めていることを起点にした店づくりやメニューづくりが大切です。

数字に強くなる

飲食店は、オーナーが人に食べさせたいものをただふるまうための場ではありません。商売であることを忘れてしまうと、立ち行かなくなってしまいます。経営者である自覚を強く持つことが、飲食店経営を長く続けるためにはとても重要です。「料理は得意だが数字は苦手だ」などと平気な顔でいっているようでは、飲食店経営は失敗するでしょう。経営に関する指標をきちんと理解し、実際に計算して分析できるようになることは、オーナーの務めです。原価率、回転率、FLコストなどを適性に保てるようにしましょう。FLコストとは、フードコストとレイバーコスト、つまり食材のコストと人件費のことです。数字が悪くなったらすぐに妥当な手を打てるようにしておくことが大切です。

常連客をつかむ

店舗経営にまつわる「2割の常連客が売上の8割を作る」という言葉があります。人数的には少なくても、常連客の購買行動が店の売上を大きく左右するということを表している言葉です。常連客は、何度も足を運んで売上に貢献してくれるだけでなく、新規の客を連れてきてくれることもあります。しかし、売上拡大というと、つい新規顧客を集客することに目を向けてしまいがちです。新規客をいくら増やしても、一度足を運んでくれるだけでは一時的に売上が伸びるだけで後が続きません。

一度来店した顧客に満足してもらい、また来てもらうことの重要性を理解しましょう。既存の顧客を大事にすること、サービスの質を落さないようにすることがとても大切です。常連客が増えることは、売上の安定化にもつながります。

業務を効率化する

飲食店は、ただでさえ体に負担がかかる労働集約型のビジネスです。肉体的な負担をできるだけ小さくする工夫をすることも、飲食店経営を長続きさせるための秘訣といえます。自分の体を大切にするためにも、気合と根性でただ乗り切るというやり方は改める必要があるでしょう。業務をできるだけ効率化し、少ない人数でも店を回せるようにすることが大事なポイントです。業務の効率化は、飲食業界がかかえる慢性的な人手不足を解消することにもつながります。店づくりやメニュー開発などに力を注ぐためにも、無駄を省いて可能な限り余裕を作りましょう。

固定費を抑えた業態を選ぶのもアリ

飲食店を経営するうえで、悩みの種となりがちなのが固定費です。逆に、固定費さえうまく抑えられれば、経営しやすくなるということもできます。そこで広く知ってほしいのが、固定費を大きく抑えられる業態があるということです。withコロナ時代にぴったりな業態なので、これから飲食店経営を考えるなら、検討してみる価値はあるでしょう。ここからは、固定費を抑えた飲食系の業態について解説します。

クラウドキッチン

クラウドキッチンとは、実店舗を持たないデリバリーを専門とする飲食店のことです。クラウドキッチン用に厨房を提供する会社があるので、その厨房を借りて事業を行います。すでに設備が整っていて、なおかつ事業用としての許可も下りている厨房を使用できるため、開業時の手続きをある程度省くことができ便利です。運営会社のサービスを利用すれば、事務作業や販売促進のサポートも受けられます。ゼロから飲食店経営を始める場合でも心強いでしょう。

テイクアウト専門店やキッチンカー

テイクアウト専門店なら店舗、キッチンカーなら車が必要なので、固定費がかからないわけではありません。しかし、どちらも客席を確保する必要がないため、家賃などの固定費をかなり抑えることができます。ただし、使い捨て容器などを用意する必要があるため、その点は注意が必要です。営業許可については、通常の飲食店の場合と基本的に同じですが、キッチンカーの場合は、仕込み場所があればその場所の営業許可も必要になります。念のため、管轄の保健所に必要な申請等について確認するようにしましょう。

飲食店がwithコロナの時代を生き残るために

コロナウイルスの影響により、飲食店はこれまでにないほどの苦戦を強いられています。しかし今から開業するからこそ有利になる部分もあるということも確かです。ここからは、withコロナ時代の飲食店開業について説明します。

飲食店に求められる基本的な感染対策

日本フードサービス協会は、令和2年5月14日付で「外食業の事業継続のためのガイドライン」を発表しています。コロナ禍で苦境に立たされている飲食店経営者が事業を継続させられるように、必要な取り組みについてのガイドラインを記したものです。従業員の健康チェックや店舗の消毒、ソーシャルディスタンスの確保などについての基準を示しています。これから飲食店を開業するのであれば、このガイドラインに書かれている事項を徹底することが最低限必要です。そのうえで感染対策をしっかり行っていることを公表し、顧客に安心して利用してもらえる店づくりをするとよいでしょう。

withコロナをチャンスに変えるために

開業時から、感染症対策を想定した店舗やサービスを整えておくことが集客のチャンスにつながります。コロナ禍が収束しても、また別の感染症が日本に上陸するかもしれません。最初から感染症対策に基づいた店づくりやメニュー開発ができるのは、withコロナの時期に開業する強みです。テイクアウトやデリバリーサービスを用意したり、キャッシュレス導入をしたりすることも対策になります。後になってから切り替えようとすると、余分な手間とコストがかかり大変です。最初から整えておくようにしましょう。

選ばれる店舗になるために!店舗アプリの活用を

飲食店は競合が多いため、開業できても順調に経営を続けるのは簡単とはいえません。加えてwithコロナという新しい時代です。「選ばれる店」になるためには、他との差別化を図る必要があります。そこでおすすめしたいのが店舗アプリの活用です。ここからは、店舗アプリについて解説します。

店舗アプリとは?どんな機能がついているの?

店舗アプリとは、店舗が独自に発行する販促・集客用アプリのことです。アプリ開発のスキルがなくても、店舗アプリ作成サービスに作成と運用サポートを依頼すれば、導入することができます。アプリの機能を「アプリンク」の例で紹介すると、スタンプカードやポイントカード、回数券・定期券などが基本的な機能といえるでしょう。withコロナ時代にあると便利なテイクアウト機能やキャッシュレス機能なども搭載されています。使える機能を絞ったプランと多彩な機能を利用できるプランがあるので、自分の店舗に合うプランを選んで導入するのがおすすめです。

店舗アプリのメリット・デメリット

店舗アプリを導入するメリットとして最初に挙げたいのは、顧客の固定化が狙えるということです。一旦アプリをダウンロードしてもらうことができれば、ターゲットが固定客になる可能性が出てきます。顧客ごとに別のクーポンを配布することができるため、好みを分析すれば、効果的なサービスを提供することが可能です。また、定期券機能でサブスクサービスを始めることもできるため、足を運んでもらうきっかけづくりにもなるでしょう。もちろん、既存客に対して来店を促す機能も搭載されています。

特典つきのポイントカード機能など、何度も来店したくなる仕組みが盛りだくさんの店舗アプリは、顧客側のメリットが大きいように思われがちです。しかし、有益な顧客情報を簡単に集められ、分析できる点は店舗側にとって大きなメリットといえます。ここであえてデメリットを挙げるとしたら、コストがかかるということくらいです。費用対効果を考えれば、コストをかけることがデメリットにならない可能性も高いでしょう。

飲食店の経営は簡単ではないがやりがいはある!

ここまで紹介してきたように、飲食店経営は簡単に始められても、長く続けるのは簡単ではありません。継続的な経営をするためには、考えなければならないことがたくさんあります。とはいえ、自分の店を経営するやりがいは、何ものにも代えがたいものでしょう。しっかりと勉強し、考え抜いたうえで、愛される店をオープンさせることが大事です。

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